2019年(アメリカ)ミステリー
感想★★★☆☆
監督:M・ナイト・シャマラン
キャスト
イライジャ・プライス(サミュエル・L・ジャクソン)
ミスター・ガラス
非常に高い知能を有しているが、対して非常に脆い身体を持つ。
生まれたときからすでに両足を骨折しており、車椅子に乗っています。
難病のため、僅かな衝撃で骨折してしまう体質から、ミスター・ガラスと呼ばれる囚人。
収監された精神病院で、投薬により意識混濁させられています。
イライジャの母(シャーレーン・ウッダード)
難病を持って生まれたイライジャを心配しながらも、理知的な息子を誇りに思っています。
息子が重大犯罪者として精神病院に収監された後も気丈に面会を続け、彼の待遇を心配しています。
デイビッド・ダン(ブルース・ウィリス)
アンブレイカブル
他者の悪事を察知する感覚と、ケガや病気を負ったことのない身体を持つ。
19年前の列車事故で、ただ一人生き残った彼は、列車事故の犯人イライジャの言葉から、自らを弱者を助けるヒーローであると確信します。
父子で小さな警備会社を営む傍ら、緑のレインコートで身を隠し、街の悪人を懲らしめているため、正体不明のOVERSEER(監視人)と呼ばれています。
イライジャとデイビッドの出会いはこちら。
ジョゼフ・ダン(スペンサー・トリート・クラーク)
ディビッドの息子。
父子でセキュリティ設備店、”DUNN HOME SECURITY”を経営。
少年時代、父デイビッドが人々を助ける特別な存在であるとの思いから、父が「散策」と呼ぶ街の自警活動に協力しています。
自分の店で販売している防犯カメラを利用して、街で起こる犯罪をデイビッドに伝達しています。
「椅子の男」ですね。
母のオードリーは本作と前作の間に病死。
ケヴィン・ウェンデル・クラム(ジェームズ・マカヴォイ)
ザ・ホード
幼少期に父を亡くし、残った母に受けた虐待により、多重人格となる。
24の人格の中の一つに、凶暴な”ビースト”という殺人まで厭わない超人的な人格を持っており、自らの境遇から、苦難を知らない恵まれた人々を憎んでいます。
ビーストのお話はこちら。
ケイシー・クック(アーニャ・テイラー=ジョイ)
父を亡くし、引き取られた叔父による虐待を受けていた女子高校生。
ケヴィンの別人格によって誘拐、殺害されそうになるが生還しました。
自分と同じく虐待を受けた過去を持つケヴィンにシンパシーを感じています。
前作での生還により、強い心を持ったケイシーは、叔父の暴力を告発し、遠ざけることに成功します。
エリー・ステイプル(サラ・ポールソン)
精神科医。
自分をスーパーヒーローや凶悪なヴィランだと思い込み、驚異的な身体能力を発揮する人々を、精神障害や自己暗示によるものとして研究している。
「アンブレイカブル」「スプリット」それから「ミスター・ガラス」
「シックス・センス」のシャマラン監督のサーガ3部作の完結です。
ぼくにはいまのところシャマラン監督の映画で「シックス・センス」以上の作品はないのですが、どうしても期待して観てしまいます。
メインキャストは3人とも大好きな俳優さんです。
前作、「アンブレイカブル」「スプリット」をざっくりおさらい。
アンブレイカブル
ケガをすることのない男、デイビッドは列車事故によりただ一人生き残りました。
この列車事故を計画、実行したのは、難病により絶えず骨折を繰り返す男イライジャ。
イライジャとの出会いにより、デイビッドは自らを、人々を危険から救うヒーローであると認識することとなります。
イライジャはデイビッドによって、脆く壊れやすい肉体を持つヴィラン「ミスター・ガラス」として精神病院に封じられました。
スプリット
ある日、奇妙な男に誘拐されたケイシーは、彼が多重人格であることを知ります。
彼の持つ23の人格によって誕生した、最後の人格”ビースト”は自らを凶暴なモンスターに変える人格でした。
ビーストは自分が、苦痛を知らず生きる人々を汚れていると見なし、彼らを抹殺するために誕生したのでした。
絶体絶命となったケイシーですが、ビーストはケイシーの虐待経験を知り、彼女を手に掛けることを止め姿を消しました。
「ミスター・ガラス」あらすじ。
監視人と群れの出会い。
前作、「スプリット」で生き延びた、ケヴィンの中のビーストをリーダーとする人格の”群れ”(ザ・ホード)は、女子高校生誘拐殺人事件を繰り返していました。
同じ街でデイビッドは、夜ごと散策と称し、街の自警活動をしながら、息子のジョゼフと誘拐犯の手掛かりを探しています。
ある日、街はずれの廃倉庫地区でデイビッドは、多重人格の一つ「ヘドウィグ」として出かけるケヴィンとすれ違い、サイコメトリーによって彼の誘拐を知り被害者の救出に向かいます。
デイビッドが少女たちを救出中に戻ってきたケヴィンはビーストとなり、二人のバトルとなります。
バトルのさなか、二人が窓ガラスから外に飛び出したとき、辺りは日も暮れ、雨も降り始めていました。
水が弱点のデイビッドは窮地となりましたが、駆けつけた警察隊のサーチライトでケヴィンも動きを止められ、二人は警察隊に拘束されます。
警察隊に同行してきたステイプル博士は、二人を精神障害による暴力性と診断し精神病院に入院させるのでした。
一堂に会する超人たち。
収容された彼らはそれぞれ、彼らの嫌うストロボ装置とスプリンクラーで自由を奪われた個室に収容されます。
その病院には、”ミスター・ガラス”イライジャも拘束されていました。
ステイプル博士は、投薬によって意識が混濁しているらしいイライジャを含め3人を一室に集め、彼らの能力は、思い込みによって平均より高くなっているだけだと説明し、治療が必要と話します。
3人の関係者、イライジャの母、ケイシー、ジョナサンたちもそれぞれ、イライジャたちの驚異的な能力を、障害ではなく超能力だと博士に訴え、彼らの退院を希望しますが聞き入れられません。
数日後の夜、イライジャは自室を抜け出し、ケヴィンの部屋を訪ねます。
心神喪失と見えたイライジャは薬をすり替えており、朦朧としていたのは演技でした。
イライジャはケヴィンに
「逃がしてやるから、その時で構わないからビーストに会わせて欲しい。」
と持ち掛けます。
自分の意思を伝え自室に戻ったたイライジャでしたが、監視カメラに映っていたことで、詐病がステイプル博士にバレてしまいます。
その結果、監視カメラが病院中に増設されますが、脱走の試みを止めないイライジャはレーザーによる不開頭手術により廃人にされてしまいました。
まあこれも、部屋を抜け出た際にイライジャはレーザーメスのレンズを盗んでいて、脳の損傷を防いでいたんですが。
廃人のふりをしたイライジャは、介護のために部屋に来た看護師の首を、ガラス片で切り裂き部屋を出ます。
脱走と追跡。
意気揚々と部屋を出たイライジャは、デイビッドに彼の部屋の前で、これから脱走し、ちょうど街で完成祝賀会が行われるビルで災害を起こすと宣言し、ケヴィンと脱走を試みます。
脱走の手始めに、イライジャはビーストを呼び出すことに成功します。
イライジャに襲いかかろうとするビーストでしたが、度重なる骨折を経験している彼の苦痛を認め、彼との同盟を受け入れます。
一方、ステイプル博士の言葉で、自身の能力に懐疑的になっていたデイビッドでしたが、イライジャを止めるために、ついに鉄のドアを打ち壊し、彼らを追うのでした。
激突と真実。
脱走する二人に、デイビッドは病院のロータリーで追いつきます。
再びぶつかり合う、3人の前に、イライジャの母、ジョナサン、ケイシーが駆けつけます。
そして、ジョナサンは、自分が突き止めた真実を叫びます。
「ケヴィンの父親は、あの列車事故で命を落としたんだ!」
イライジャが引き起こし、デイビッドが生き残った列車事故で、ケヴィンの父親は亡くなっていたのです。
ケヴィンは、夫を亡くしたショックで精神を病んだ母の虐待によって、多重人格を発症しました。
全ては、イライジャによって引き起こされたものでした。
怒り狂ったビーストは、イライジャを襲い、彼の母の前で致命傷を負わせます。
イライジャは、二人の超人を生み出したのは自分の計画によるものだと、満足気に母に看取られ息絶えるのでした。
ビーストを止めるために、ケイシーは、ケヴィンの名を呼び、本体である彼を呼び出します。
その瞬間、病院の警備隊の狙撃によって、ケヴィンは撃たれてしまいます。
銃の効かないビーストではなくなっていた彼もまた、ケイシーの腕の中で命を落とすのでした。
真実の後。
ビーストとのバトルのさなか、病院のスプリンクラー用の水タンクに落ちたデイビッドは、瀕死の状態でタンクを破壊し脱出しますが、彼もまた、駆けつけた警備隊によって、水たまりで溺死させられてしまうのでした。
死の寸前、警備隊の手首に彫られた3つ葉のクローバーのタトゥーが目に映ります。
ステイプル博士が彼を看取るために、デイビッドに触れたときに、真実がフラッシュバックします。
ステイプル博士は、時代を超えて存在する秘密結社の一員でした。
その結社は古より、超人たちによって世界の秩序が破壊されないように、超人たちに干渉していたのです。
結社に世界の脅威になると判断された、イライジャ、デイヴィッド、ケヴィンは、彼らによって抹殺されてしまったのです。
終わりと始まり。
3葉のタトゥーを持つ者たちの会合で、3人の処分を報告するステイプル教授でしたが、会合の後、胸騒ぎを感じ、病院へ戻ります。
彼女が、監視カメラの映像を確認すると、すべての映像がダウンロードされた形跡がありました。
ダウンロードされた映像は、SNSによって拡散されるようにプログラムされてたのです。
彼女は、イライジャが、カメラを増設させるために、わざとカメラに映りこむように部屋からの脱走を行っていたことに思い当たるのでした。
イライジャの本当の計画は、ステイプル博士たち、結社の裏をかき、超人たちの存在を世界に知らせ、新しいスーパーヒーローやヴィランの誕生を促すというものでした。
博士は、彼女たちが支配してきた秩序の終焉を知り、一人愕然とするのでした。
とある混雑する駅の待合室に、彼らを愛した3人の関係者たちは集まります。
3人は、行きかう人々のスマートフォンやモバイルパソコンを通じて拡散する、彼らが生存した証を確認し、新しい時代のはじまりを期待するのでした。
感想。
シャマラン監督のアメコミに対する愛情がとってもよく伝わる映画でした。
ド派手な映画だけが、アメコミじゃないと、19年も前から訴えかけていたんですね。
地味で、目立たない人間でもスーパーヒーローになれる。
傷ついても、人より劣った部分があっても、
若くなくても、再確認してやり直すこと、前進することは可能なんだよって。
だいぶカットされたシーンがあるようですが、もったいないな。
続編はないらしいです、はい。
ぼくは、アンブレイカブルが好きな映画のひとつだったので、ちょっと一つの時代が始まって終わってしまったような淋しさがあります。
3つ葉のクローバーはどういう意味だったんでしょう。
イライジャ、デイビッド、ケヴィン
イライジャの母(最期まで役名なかった!?)、ジョナサン、ケイシー
アンブレイカブル、スプリット、ミスターガラス
探せばいろいろ”3”にまつわるものがあるってことかな。
あ!あと、ステイプル博士の”ステイプル”って、staple=ホッチキスだよね。
ホチキスやかすがいって、つなぎ合わせる物、
3人の超人を引き合わせるものって意味だとぼくは思ったよ。
じゃあ、またね。